かつお節一辺倒であった私が昆布の美味しさを知ったのは「柚子釜」と「煎り酒」が始まりです。
「柚子釜」はご存じの通り柚子をくり抜いた中に好みの具材を入れて蒸したもの。
母は、柚子の底にもどした昆布と敷き詰め、薄く下味をつけた白身魚や海老・きのこ・青菜・銀杏などの具材を入れていました。
昆布だしに浸けたしめじやほうれん草などの青菜と魚・昆布などのうま味が極上の味となって楽しめる冬至の定番メニューです。
これからは娘にも伝えていきたい味のひとつでもあります。
そして「煎り酒」は・・祖母の味。
「煎り酒」は醤油が一般的に普及していなかった江戸時代中期頃まで使われていた液体調味料です。基本は日本酒にかつお節や梅干しを入れて煮詰めたもの。
江戸時代の料理書「料理物語」にも煎り酒の作り方が載っていますが、祖母の作る煎り酒には、他に昆布と少しの塩が入っており煮詰めたものを漉して保存していました。
昆布の有り無しで二種類の煎り酒を飲み比べしたのですが昆布を入れた方が、更に深くまろやかな味になりました。
煎り酒は、素材の味を活かす上品な味で用途は広く、湯豆腐や蒸し物、煮魚などにも大変合います。年に数回作る程度ですが、冬になると常備したくなる魅力のある調味料です。
自然に恵まれた日本の素材を活かす食文化はここにもありました。
その美味しく食べる為の探求心と意識の高さは、日本人として誇りに思えるものです。
さて、皆様のご存じの通り、昆布には種類があり「真昆布」「利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」などが代表的なものとしてあげられます。
国内生産量の90%を占める北海道の昆布は海流や山林・岩盤などの生育環境によって種類が異なります。
それぞれの特徴をあげてみましょう
●真昆布:褐色で幅広の肉厚。上品で甘味のある澄んだだしがとれる。
高級だしの他、佃煮やおぼろ・とろろ昆布にも使われる
●利尻昆布:赤みを帯びた褐色の幅広で肉厚。香り高くやや塩気があり、澄んだだしがとれる。京都の日本料理店での消費が多い。高級だしの他、おぼろ・とろろ昆布にも使用。
●羅臼昆布:茶褐色の幅広で柔らかい。肉厚。濃厚で香り高く黄色みのあるだしがとれる。富山地方での消費が多い。
高級だしの他、おやつ昆布・昆布茶などの原料になる。
●日高昆布:濃い緑に黒みを帯びた色。厚みは薄めで柔らかく火通りが良い。
家庭用だし。昆布巻・煮物・おでんなどに使用。関東以北での消費が多い。
昆布は地方によって使用される種類も消費量も異なります。
それは、海上交通が盛んになった江戸時代に、北海道と本州、更には琉球王国(沖縄県)・清(中国)まで昆布を運んだ流通航路「昆布ロード」が各地の食文化を形成する大きな礎となり今に至っているからです。
また、結納や結婚披露宴・鏡餅・福茶など縁起物としても大切に使われてきた歴史を振り返ると、四方海に囲まれて生きてきた
日本人の昆布を食べる習慣は大切に守り伝えていきたいと思います。